バイト先で9.11のニュースを知った直後、ボランティアで通っていたレコード屋のオーナーからショップサイトの立ち上げを手伝ってくれないかと携帯に連絡が入る。当然二つ返事で返す。当時はなにも考えていなかったけど、運営陣たちにとって大きな判断を迫られる時だったのだろう。
お酒好き、パーティ明けで遅刻もそれなりに、自由な人たち多かったけど、スタッフはみんな凛としていて音楽でもう一つの道を切り開こうとする姿は美しかった。
iTunesやダウンロードが主流になろうとした頃に誰がレコードブームが再来すると想像できただろう。そのまま就職も誘われたが、この世界から一度離れてサラリー社会を知るのも良いと思い、レコードに囲まれたバックヤードで丁寧にお断りした。
その後暫く経ち、友人からOther Musicをお薦めされていたにも関わらず、2015年にマンハッタンに行った際にはすっかり存在を忘れていた。ブルックリンのカルチャーやローカルなレーベルに目が向きすぎていた。悔やまれる。
WILLIAM BASINSKIを1週間前に友人の店で勧められ、カウンターで徐々に変化するループを浴びていた。カバーの写真も良いねと話していたが、まさか9.11直後に作られた作品だったとは。ドキュメンタリーの中でも重要な人物として登場してきたが、みうらじゅん風な風貌であやしかった。
コミュニティのサイズが良くも悪くも小さくて濃くなり、タワレコは言うまでもなく、Other Musicの規模であっても身動きが取りづらくなった。肉体が資本である限りは、現場主義やライブ感など原点回帰主義は一定量続くはずだが、家賃だけで1万ドルかかるエリアだと当然維持できない。店を畳む判断は仕方のないことだと思うが、一方でSNSと場所とスケールをバランスよくコントロールするやり方で、集う人たちの熱量をそのまま維持または拡大できないか考え続けたい。
窓が大きくて、いっぱいの陽が差し込むあの大通りに面した場所の魅力を羨ましくも思うが、それは過去の話。距離と移動を前向きに捉えたら新しい世界は拡がりそう。